どくのメモ帳

どくイモムシの毒吐き場。

「熱血硬派くにおくん」が、俺たちの道を示してくれる

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【前回の「熱血硬派くにおくん・攻略編」はこちら

よくきたな。俺はKANDWAだ。
俺は真の男・逆噴射聡一郎氏の掲示を受け、真の男の真のゲームや真の創作を追い求めている。

去る2018年6月28日、Nintendo Switch版「アーケードアーカイブス 熱血硬派くにおくん」が配信された。
前回では、お前たちに真の男となってもらうべく「熱血硬派くにおくん」の攻略法を伝授した。
果たして、「熱血硬派くにおくん」をクリアした真の男は増えてくれただろうか?
だが前回俺は言ったはずだ。俺の「熱血硬派くにおくん」に対する想いは1記事では語りつくせないと。
だから今回はレビュー編として「熱血硬派くにおくん」が今もなお俺を魅了し続ける「真の男の真のゲーム」たりうる魅力、
そして単なるアーケードゲームの名作に留まらない、次代に語り継ぐべき歴史的資料価値がある
「日本昭和不良文化遺産」となりえるゲームである事を証明したいと思う。

この平成末期の世に、今もなおお前の魂にくすぶる何かがあるのなら、「続きを読む」を押すがいい…………!

熱血硬派序章

俺たち現代日本人は心底平和な国と時代に生まれた。
災害とか犯罪とかいろいろあるにはあるが、少なくとも歩道に毒サボテンは生えていないし、
電信柱の陰からダニー・トレホ*1がナイフを投げつけてくることもないし、
便所に毒サソリが潜んでいることもない。
たとえばお前がマクドナルドでダブルチーズバーガーなどを頬張っていると
突然入り口から「ザッケンナコラー!!」と拳銃を構えたヤクザの軍団が押し入り
お前の後ろのスーツの集団が「スッゾコラー!!」と立ち上がって懐から拳銃を取り出し
たちまち銃撃戦が始まり、お前は立ち上がって逃げる間も無く流れ弾に撃ち抜かれて死ぬ、なんてこともないし
たとえばお前が駅のホームで呑気に歩きスマホなどしていると、ホームの片隅で座り込んでいた無軌道高校生のリーダーが立ち上がり
「テメェー!!何スカした真似してンだコラァーッ!!」とふっかけてきて
「「「ザケンジャネェー!!!」」」と一瞬にして無軌道高校生の群れに囲まれて棒で叩かれ、
行き交う人々は見て見ぬ振りをし、やがてスマホは叩き割られ、身ぐるみは剥がされ、
無軌道高校生の群れはとっくに逃げ去り、お前はようやく駆けつけてきた駅員の「大丈夫ですか!?」の声も聞こえず
ホームの天井を見上げたまま、やがて意識は遠のき…….そのまま瞳を閉じ…….
そのまま永遠にお前の瞳は開かれない…………END OF HEISEI…………
なんてことも多分ない。実際馬鹿馬鹿しい話だと思うだろう。
無論、だからといってお前たちがいつでもどこでも平然と歩きスマホをしても良い理由にはなるまい。
そんな現代社会をナメきったようなやつはメキシコだろうと日本だろうと、いつかロクな目に遭わないだろうし、最悪しぬ。
とにかく歩きスマホはやめろ。

だがお前たちは知っておかなければならない。
お前たちが生きていなかったであろう昭和、1970年代。
ほんの約50年ほど前の時代、かつて日本には、メキシコ並みに危険だった時代があったのだ。
家では家長たる父親に殴られ、学校では暴力教師と無軌道高校生との戦いが日夜繰り広げられ、
ゲーセンに逃げれば無軌道高校生のカツアゲに遭い、
公園では戦場帰りのシェルショック老人が奇声を張り上げて竹槍を振り回して子供達を追い回す。
そして街にはヤクザが幅をきかせる…………それが昭和混沌期の日本だ。

校内暴力が社会問題化していた七○年代後半。
TVドラマ『3年B組金八先生』(パート2)の盛り上がりは最高潮に達した。
「腐ったミカン」と罵られ荒川二中を放り出された加藤優は、
金八の必死の思いにも関わらず以前いた学校に乗り込み、
校長と体罰をした体育教師を監禁。放送室を占拠し彼らに謝罪を求め、
話し合いの末勝ち取った。その後逮捕され、中島みゆきの『世情』をバックに
護送車へ連行されるシーンを覚えている人も多いだろう。
あのとき、加藤にシンパシーを抱いていた学生は確実にいた。

そう、そのとき「不良」は確実に存在したのだ。

────松谷創一朗 (株式会社ZEST『お宝ゲームの逆襲!』より。以下の引用もすべて同書より)
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熱血硬派くにおくん」は、そんな混沌たる昭和の時代を描き上げた、
かつて「不良」であった真の男・ディレクター「岸本 良久」(現「株式会社プロフェット代表取締役)の人生から生まれ
当時のテクノスジャパン社長「瀧 邦夫(たき くにお)」の名を与えられた真の男「くにお」の物語だ。

もしもお前が歩きスマホを理由に無軌道高校生の群れに襲われたとき、
ひとりの真の男がその光景をみてコンマ数秒で怒りを爆発させ、「待てこの野郎!」と飛びかかり
無軌道高校生を次々と殴り倒して追い払い、そして尻餅をついたお前に真っ先に手を差し伸べ
「大丈夫か?」と手を引いてくれたならば、お前はありったけの感謝を真の男に告げ、
公衆電話で会社か学校に連絡しそのまま出勤/通学するなり休みにして病院に行って治療を受けるなりすることができるだろう。
そしてその夜、お前は「今日はひどい一日だった。でもあの少年のおかげで無事に今夜を過ごせたんだ…….そう言えば、名前も聞いてなかったな…….」
と真の男に想いを馳せながら安らかに眠りにつき、また新しい明日を迎えることができるはずだ。
果たして現代日本に、そんな「真の男」がどれだけいるだろうか…………。

「不良」には大まかに二種類存在する。
片方はただ漠然と権力や社会に反抗し、その日その日の享楽に狂い青春を乱費する腰抜け。
もう片方は己の信念と正義を拳に固く握り締め、生きた証を刻みその正義を時代に刻みつけるべく
許さざるべき「悪」を相手に拳を振るう真の男。「くにお」は紛れもなく後者だ。
熱血硬派くにおくん」の主人公「くにお」は、まさしく己の正義を貫き、無力な一般人や私利私欲のために拳を振るわない真の男だ。

熱血硬派くにおくん」を「熱血硬派」たらしめるもの

お前たちに危機感を少しは取り戻してもらったところで、そろそろ本題に入ろう。
アーケード版「熱血硬派くにおくん」の魅力についてだ。

さて、お前たちはこれまでプレイしたゲームの中でどれだけのお姫様やらガールフレンドやらを助けてきたことだろうか?
中にはヒロインが敵の親玉格の妹で、心ならずとも殺害してしまったことで己の戦いの意味に疑問を抱き、ヒロインの亡骸を抱いて絶叫したり
力及ばず主人公の目の前で真のラスボスにヒロインが殺害され、ヒロインの亡骸を抱えて絶叫するもその魂が主人公に
憑依してパワーアップしてラスボスを倒すも、その次回作のラストで
主人公に憑依していたヒロインの魂とライバル主人公の妹の肉体が融合し、主人公の求めたヒロインでもライバル主人公の妹でもない
存在となってしまったりするひどいゲームもあったが、まあお前たちは紆余曲折あって様々なヒロインを救出してきたはずだ。

「ヒロイン救出」のテーゼは、けして真の男の道として間違ってはいない。
アニメ、漫画、ゲームのみならず神話の時代…….ギリシア神話古事記にも記された、真の男の王道だ。
だが、その真の男の王道にさえ「なめんなよ!この野郎!!」と拳を叩きつけた者たちがいた。
熱血硬派くにおくん」の開発メーカー、「テクノスジャパン」である。

荒みきった駅のホームで、排気ガスの臭いが充満し「プァンプァンプァーン」という港独特の音が響いてそうな埠頭で、
電飾が煌めき、「たのしいオモチャ」「3000円ポッキリ」などといかがわしい看板が光に照らされる歓楽街で、
そして、高級スナックや高級車が並ぶ、凶悪無比なるヤクザの縄張りである郊外で…….くにおは乱闘を繰り返す。
しかもただ独り、徒手空拳でだ。何のために?そこには、理由なき反抗や明日なき者たちの無軌道暴力行為などどこにもない。
くにおには、敵を殴るべき正当な理由、そして己自身よりも守るべきものがある。

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コインを投入し、ゲームを開始するとまずデモ画面が始まる。
そこは、割れた窓ガラスが荒廃ぶりを物語る「熱血高校」の校門前。
画面左には白い学ランをまとった少年、彼は「くにお」ではない。
そしてその少年を画面右側のボスが見守る中、抵抗すら出来ぬままボスの取り巻きの1人がボコボコに殴って気絶させてしまう。
そこへようやく「待てこの野郎!」のボイスと共に主人公「くにお」が駆けつけ、
場面は敵ボスの縄張りへと移行し、ステージ開始となる。
そしてこのゲームは、ステージクリアの度に上記のデモが最初から最後まで繰り返されるのだ。

最初にボコボコにされた少年の名は「ひろし」。
孤独な戦いを続ける「くにお」のこの時点での唯一無二の親友、
否、真の男の真の友、略して「真友」だ。
毎回ボコボコにされる姿からわかるように、彼は決して「くにお」や「りき」のような「真の男」には程遠い。
しかし、ダウンするまで敵雑魚のパンチに6発も耐えたり、
何度ボコボコにされようとも次のステージデモやエンディングでは元気な姿を見せるあたり、
「真の男」たりうるタフネスは十分にあるようだ。
そんな「ひろし」が真の男たり得ないのは、彼が腰抜けだからではなく、
おそらく相手が悪人であっても拳を振るうことができない「優しさ」があるからだろう。
しかしその「優しさ」こそが、拳でしか相手と分かり合えない哀しみを背負った「くにお」が、
「ひろし」とただ一人魂でわかり合うことができたたったひとつの接点なのだ。

なお、「ダウンタウン熱血物語」以降、くにおの相棒、あるいは良きライバルとなる「りき」はこの時点ではくにおの相棒ではない。
なぜなら「りき」は本作の最初のステージのボス、「ひろし」の最初の仇なのだから。
さっき不良は二種類あると言ったが、くにおが戦うボスすべてが腰抜けの享楽主義者とは限るまい。
りきにはりきの正義があったかもしれない。そうでなければ、「ダウンタウン熱血物語」において
正式にくにおとりきのタッグが実現したりしなかったはずだ。
だが今はだれの正義がどうとかは正直どうでもいい。やつらはひろしを殴った、落とし前をつけさせるべき仇だ。それだけだ。

お前はこの数秒のデモの中で理解しなければならない。
このゲームは真の男「くにお」の敵討ちの物語であり、
「くにお」と「ひろし」の真の友情の物語なのだ。
当時のテクノスジャパンの意図が理解できただろうか?
ヒロインとの色恋などにうつつを抜かすような奴は、いかにケンカが強くとも
「熱血」の上にさらに「硬派」をつけて名乗る資格などない、と言っているのだ。

この時点で、「熱血硬派くにおくん」が後の「くにおくん」シリーズはもちろん
スパイク・チュンソフトの「喧嘩番長」とかの他の「不良ゲーム」の追随を許さぬ存在であることは明白だ。
本作は昭和混沌期の不良世界を表現するだけでなく、色恋にうつつを抜かさず
己の本当に守るべきもののために強きをくじく「正義の不良」の生き様を体験できるゲームなのだ。

しかし、「熱血硬派くにおくん」の海外版「RENEGADE」や、実質上の続編「ダブルドラゴン」では
あっさりとヒロイン救出に回帰してしまったのが非常に残念だ。
(余談だが、「ダウンタウン熱血物語」でもヒロイン救出劇であるが、くにおがりきとタッグを組んで
助けに行くのはあくまでりきの彼女の「まみ」だ。くにおはどこまでも、私欲のためにその拳を振るわない真の男なのだ。)

しかし、そのことがかえって「熱血硬派くにおくん」の独自性を高めていると言えるだろう。

荒いドットで力強く描かれた、昭和暗黒期の風景

熱血硬派くにおくん」そのもうひとつの魅力は、不良が跋扈した昭和暗黒期の日本を描写した背景ビジュアルだ。

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たとえば「りき」との死闘の舞台となる最初のステージ、駅のホームでは電車はもちろん、向かいのホームの人々、
ホーム下部の退避スペースや画面左端のキヨスクのおばちゃんまで細かく描かれ、看板には「TJC(TECHNOS JAPAN CORP.の略)」
「TEC」「HN」「OS」とか書いてあって自社のアッピールにも余念がない。
(こうした自社アピールは同社の「ダブルドラゴン」でもよく見られる。
なお「ダブルドラゴン」ステージ1のどこかに「熱血硬派くにおくん」とおぼしき看板が隠されている。)
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その次の暴走族のリーダー「しんじ」が待つ夕暮れの埠頭は暴走族のバイクと
竹槍マフラーが目を引くしんじの愛車が並び、海に浮かぶ煌きの描写が見事だ。
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後半戦のステージ3、スケバンのボス「みすず」が君臨する夜の歓楽街では、前述のように
「たのしいオモチャ」「3000円ポッキリ」などといかがわしい看板が電飾に照らされ、
ミニスカート女の看板があったり、ステージ右端がディスコだったりする。

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そして最終ステージ、「くにお」の最後の戦場であるヤクザの事務所は圧巻だ。
木目調の壁、緑のカーペット、無造作に倒れたゴミ箱、
観葉植物、赤電話、豪華なソファー、
威圧的な刀オブジェ、何かの訓戒が記されたパネル、
めくれ上がったボロボロの掛け軸、そして神棚。
まるでほんとうのヤクザの事務所に取材でもしたかのような細かさだ。
当時のテクノスジャパンにヤクザの関係者でもいたのだろうか?あるいは…………。


一九八七年二月。とある政令指定都市でのこと。
中学入学を目前に控えた一人の小学生は、
スーパーのようなデパートの屋上で
熱血硬派くにおくん』に興じていた。
頭はリーゼントで、学ランを身に纏ったくにおくんは、
その日も「待て、この野郎!」と叫んでいた。
(中略)
この世界は、ひどくリアルであった。
なぜなら、二ヵ月後に中学生になる少年は、
カツアゲを恐れ、紙幣を靴下に隠して、それに興じていたのだから。
(中略)
だが、それでも私たちはゲームセンターに行きたかった。
そして自分たちが恐れているはずの「不良世界」を表現していた『くにおくん』に興じたかった。

「不良は恐いけど、でも不良の世界を楽しみたい!」

「不良」に対する恐怖と興味が交錯したアンビバレンツな感情の中、
小六の私はゲームセンターにいた。まだ、世の中も、
そしてゲームを取り巻く環境も、その程度の時代だったのだ。

────松谷創一朗

熱血硬派くにおくん」は、当時としては極めて「R・E・A・L」なゲームであった。
「古き良き昭和」などと知った顔で過去を良かったものにしようとする現在の懐古主義者どもには
とても描けない、暴力と退廃に満ちた昭和暗黒史を荒いドットでこれでもかと細かく描き上げている。
で、ここまで書くと「老害乙!PS4の3Dグラフィックのほうがよっぽどポリゴン数も多くて実際リアル!!」
などと抜かす腰抜けが湧いてきそうな気がする。あほか。たとえどんなにPS4がリアルな昭和の街並みを描けたとしても
それはかつて昭和を生きた人間の証言や、色あせた当時の写真とかを資料にした「虚像の虚像」でしかなく、
とても「真のR・E・A・L」とは言えない。「真のR・E・A・L」とは、その時代を生きたものがその時代の風景を
その時代の技術で描き上げなければ遺せないものだ。そうでなければ、美術館とかにある19世紀の風景画とかは
とっくに焼却炉で灰になっている。俺は最初にいったはずだ。「熱血硬派くにおくん」には
「単なるアーケードゲームの名作に留まらない、次代に語り継ぐべき歴史的資料価値がある」と。
熱血硬派くにおくん」というアーケードゲームは、「スクール★ウォーズ」とか前述の「3年B組金八先生(パート2)」とかと並んで
「日本昭和不良文化遺産」として、後世に語り継がれるべき作品なのだ。

そして、「熱血硬派くにおくん」のR・E・A・Lさは、背景描写に留まらない。
ステージ4では、ヤクザの持つドスで刺されたり、最終ボス「さぶ」の持つ拳銃の弾に当たるとくにおは即死する。
あまりにもR・E・A・Lかつ、無慈悲で理不尽だ。
だが、「真の不良」そして「真の男」の本懐とは、その理不尽に抗い立ち向かう勇気なのだ。
ゆえに、「熱血硬派くにおくん」は真の昭和のR・E・A・Lなゲームであり、なおかつ
どんなに熟練しようと一瞬の油断で死ぬ非常にスリリングで何度プレイしてもダレないし飽きのこないゲームなのだ。

作品とは、血の通った人間なのだ。人間の生きることだ。
それはパルプ小説でも漫画でも音楽でもうごメモでも───そして、ゲームでも変わらない。
孤高の不良、真の男として、かの混迷の時代を駆け抜けた「岸本 良久」という男の人生の一部、
それが「熱血硬派くにおくん」だ。

真の「熱血行進曲」

最後に語る「熱血硬派くにおくん」の魅力は、BGMだ。
本作のBGMはいかにも昭和的、不良的なロック音楽だが、特筆すべきはやはりデモ画面の音楽である。


……いかがだろうか。デモ画面で流れるBGMはロック音楽とは異なり、トランペットっぽい音をメインにした
静かに熱く、重く勇ましく、どこか物悲しい楽曲だ。これぞ「熱血硬派」を体現する「熱血硬派くにおくん」のテーマ曲に相応しい
真の「熱血行進曲」と呼べる一曲だ。「熱血硬派くにおくん」はファミコンに移植されているが、
ファミコン版で聞けるのはエンディングでのバラード風のアレンジバージョンだけだ。
すなわちこの曲はアーケード版でしか聞くことができない。よって、この「熱血行進曲」こそが
この俺がアーケード版「熱血硬派くにおくん」を全力推しする最後の理由だ。
だから必ずアーケード版およびアーケードアーカイブス版「熱血硬派くにおくん」をプレイするならば
まずプレイ前にデモ画面を見ろ。これを聞かずして、「熱血硬派くにおくん」を語るなかれ、だ。

その後の「くにおくん

………………しかし。
その後の「くにおくん」シリーズの展開、そしてテクノスジャパンの最期については
熱血硬派くにおくん」の名を少しでも知る者にとっては周知の通りだ。

だが、それと同じ頃、「不良」はどんどん解体もされていた。
なめ猫」によるパロディ化。「不良」の表面的スタイルだけを継承した
「ツッパリ」ロックの横浜銀蠅。「不良」は八○年代“軽チャー”の格好の素材になってもいたのだ。
(中略)
それの代表ともいえるべきものが、『週刊ヤングマガジン』で連載されて人気を博した
『BE BOP HIGH SCHOOL』だ。
「熱血派」にはほど遠い「不良」ゴッコに興じてばかりの気合の入ってない
高校生のダラダラした日常が延々描かれてるこの作品には、
『理由なき反抗』でのジェームズ・ディーンや、
あしたのジョー』の矢吹丈
男一匹ガキ大将』の戸川万吉、
そして、『金八』においての加藤優の姿はなかった。
パロディの延長上にある、ファッションとしての、
八○年代ジャパニーズ・ポップとしての「不良」像しかなかったのだ。

そして『くにおくん』も、その時代に抗うことなく、
ただただそれに同調していく。

────松谷創一朗

アーケード版「熱血硬派くにおくん」リリースから2年後の1988年。
戦乱と混沌と熱気の昭和時代が終わり、その後30年にわたる「平成」の世が始まった。
バブルの狂乱が終わり不況の暗雲が日本を包んでいく中、時代は「真の男」を必要としなくなった。
権威と暴力で家庭を支配・管理した「家長」は嫁に小遣いを管理される「マイホームパパ」に取って代わられ、
風営法改正、ゲームメーカー直営ゲームセンター、そしてアミューズメント施設の台頭によって
ゲームセンターは子供連れでも気軽に立ち寄れる場所へとへんかした。

八十七年に本作がファミコンで移植発表された翌年、
熱血高校ドッジボール部』でくにおくんはなぜかドッジボールに勤しんでいた。
その瞬間、本来の「熱血硬派」ぶりはひどくスポイルされ、
くにおくんただの体育会系野郎と化した。
(中略)
くにおくん」は、時代とゲーム界の成長にいち早く迎合するための
都合の良い記号として、加速度的に消費され、
実体を持たないまま拡散していく。

────松谷創一朗

そんなわけで、アーケード版「熱血高校ドッジボール部」以降くにお達の頭身は一気に下がり
硬派な不良から熱血ケンカスポーツマンへと転身した「くにおくん」は
「高校生にもなってドッジボールなんて…….」などと無粋なツッコミを受けることもなく
その後、アーケード版をリファインしゲーム性が進化したファミコン版「熱血高校ドッジボール部」の大ヒットにより
くにおは活躍の場を家庭用機に移し、サッカー、アイスホッケー、何でもアリの大運動会、
野球、ストリートバスケット、格闘技、時代劇、ビーチバレー、
果ては落ちものパズルまでさまざまなスポーツ・ジャンルに挑んで
ファミコンを中心にゲームボーイスーパーファミコンPCエンジンと多彩なハードでシリーズを展開。
小学生たちの間で大人気を博し、約7年間で24作ものシリーズを展開した。
執筆現在、ファミコン時代に生まれたRPGの二大巨塔ドラゴンクエストが11作、
ファイナルファンタジーが15作なのを考えるとこの販売ペースは明らかに異常であった。

しかし、「熱血硬派くにおくん」から続く「不良のケンカアクション」としての側面も失われてはいなかった。
その筆頭はGBA3DSとリメイクされ、Nintendo Switchの「ファミリーコンピュータONLINE」にも真っ先に収録された
ダウンタウン熱血物語」だ。
キャラクターの頭身は「熱血高校ドッジボール部」よりさらに低くなり、縦長方形のシルエットは
その後の「くにおくん」シリーズのスタンダードとなった。
ゲーム内容はアクションRPGとなっており、ファミコン版「ダブルドラゴン」をRPGにしたような感じだ。
たしかにキャラクターの頭身は下がり、ゲーム内容は大味な印象もあり、コミカルな印象が強くなったが
それでも「熱血硬派」たるアツさは失われてはいない。
他にも、熱血スポーツマンとしてのくにおくんシリーズだけでなく「熱血硬派くにおくん」の路線も継承すべく
テクノスジャパンスーパーファミコン参入第一弾として「初代熱血硬派くにおくん」が登場。
本作は「岸本 良久」氏が久々に関わった「熱血硬派」シリーズであり
熱血硬派くにおくん」のリメイクではなく正当な続編で、キャラクターの頭身もアーケード版「熱血硬派くにおくん」並みに引き上げられ
修学旅行で大阪へ向かったくにお達がたまたま同じホテルに居合わせた「りき」と共に新たな敵
「大阪連合」と戦うアクションRPGだ。
そしてテクノスジャパン最末期の1994年、岸本氏がテクノスジャパンで最後に関わった「熱血硬派」シリーズ、
「新・熱血硬派 くにおたちの挽歌」というアクションゲームも存在する。
キャラクターデザインは劇画調から90年代アニメ調に変化したが、
こちらもまた「熱血硬派くにおくん」「初代熱血硬派くにおくん」のさらに続編であり、
ひき逃げの濡れ衣を着せられたくにおとりきが少年院を脱獄し、
真実を暴くために新たな仲間と新たな戦いに挑む物語だ。
そして、アーケード版「熱血硬派くにおくん」に登場した強敵達も再び登場し、
熱血硬派くにおくん」の物語はひとつの完結を迎える。
それと同時期、熱血ケンカスポーツとしての「くにおくん」シリーズの最終作
「熱血!ビーチバレーだよ❤︎くにおくん」(タイトルのハートマークが情けない……。)がスーパーファミコンで発売され
「熱血硬派」シリーズと「熱血ケンカスポーツ」シリーズの最終作が奇しくも同時期に発売されることとなった。
それは、やがてテクノスジャパンに訪れる避けられない宿命を示していた。

その頃にはもう「不良」は死語に等しく、
世では新たに「チーマー」が幅を利かせていた。
そして、この「不良」イメージの解体とともに、
メーカーのテクノスジャパンも終焉を迎えた。
九十五年のことだった。

────松谷創一朗

そして、世間一般ではこの「くにおくん」シリーズ乱発がテクノスジャパンの寿命を縮めたとされ、引用どおり
1995年にテクノスジャパンは倒産、プレイステーションなどで3Dになったくにおくんを拝めた者はいなかった。
しかし時は流れプレステ2がゲーム業界を圧巻し、任天堂派はポケモンゲームキューブゲームボーイアドバンスで細々と生き延びていた時代、
テクノスジャパンと命運を共にしたかと思われた「くにおくん」シリーズに転機が訪れる。
テクノスジャパンの残党によって旗揚げされたメーカー「株式会社ミリオン」が、くにおくんシリーズの版権を獲得したのだ。
こうして、株式会社ミリオンはアトラスを通じてGBAで「ダウンタウン熱血物語」のリメイク版を出したり、
PS2オレたちゲーセン族」シリーズで「熱血硬派くにおくん」アーケード版が移植されたりした後
くにおくんシリーズの版権は「アークシステムワークス」に移り、ニンテンドーDSで「超熱血!」シリーズとして
ドッジボールやサッカーリーグ、大運動会のリメイク作を発売した後
くにおくんシリーズ25周年の2011年には「熱血硬派くにおくん」と「ダウンタウン熱血物語」との間に生まれ
「岸本 良久」氏を再び迎えた「熱血硬派くにおくん」のリメイク版「熱血硬派くにおくん すぺしゃる」がニンテンドー3DSに登場。
くにおくん」シリーズは復活したものの、長らく移植やリメイクばかりであったが
その後、アークシステムワークスは「熱血硬派くにおくん すぺしゃる」の前日譚となる
りきが主人公の「りき伝説」などなど新シリーズを次々と展開し、
2013年には「熱血硬派くにおくん すぺしゃる」の続編として「きんじし」率いる「関東獅子連合」との激闘を描く
シリーズファン待望の完全新作「熱血硬派くにおくんSP 乱闘協奏曲」が発売され
それに合わせての「NotTV」での実写webドラマ化、そして舞台化といったメディアミックス展開と
21世紀、そして2010年代でもこの世界に「くにおくん」シリーズが通用することが証明されたのであった。
そして2018年、「熱血硬派くにおくん」アーケード版も「熱血硬派くにおくん すぺしゃる」で上書きされることなく
PS4Nintendo Switchでの「アーケードアーカイブス」シリーズの一つとして完全移植。
さらに2018年12月20日には、ファミコン版「熱血硬派くにおくん」を含むファミコンくにおくんシリーズ11作品と
その一部の海外版4作、さらに海外ファミコン版「ダブルドラゴン」シリーズ3作が収録され全作オンラインプレイにも対応した
くにおくん ザ・ワールドクラシックコレクション」が現行据え置き機とSteamでの発売。
そして2019年春には、Nintendo Switch初の「くにおくん」シリーズ完全新作「ダウンタウン乱闘行進曲マッハ!!」の配信が予定されている。

俺と「熱血硬派くにおくん

1993年。時はJリーグブーム真っ只中。
スーパーファミコンの登場とともにファミコンゲームも円熟期を迎え、
ダウンタウン熱血物語」「熱血高校ドッジボール部」以降のシリーズのヒットにより
当時の小学生たちの間で「くにおくん」の名を聞いたことのない者はいなかった。
そして時を同じくして小学生だった俺がはじめて買ってもらった「くにおくん」シリーズが
熱血高校ドッジボール部 サッカー編」の続編「くにおくんの熱血サッカーリーグ」だった。

「〜熱血サッカーリーグ」は前作「〜サッカー編」で死闘を演じた各高校の代表とともに
くにおをキャプテンとする「熱血FC」を結成し、世界大会「テクノスジャパンカップ」に挑むという
まんま「キャプテン翼ワールドJrユース編」なゲームだった。
しかし、折からのJリーグブームのと小学館学年誌の記事の勢いに乗って買ってもらっただけなので
サッカーの基本戦略も、「必殺シュート」の出し方もロクに知らなかった小学生の俺は
なんとか熱血FCを決勝トーナメントまで進めたものの、トーナメント初戦の「かめるーん」チームを破ることができず
熱血FCを世界一にのし上がることは叶わなかった。

1999年。ノストラダムスの大予言は特に世の中を震撼させず来るべき21世紀への期待と、
プレイステーションセガサターンニンテンドウ64の「次世代ゲーム機戦争」の真っ只中。
俺はまだ純朴な中学生だった……プレイステーションも、セガサターンも、ニンテンドウ64も買ってもらえなかったことを除いては。
そんな世の中、次世代ゲーム機の台頭の中で新時代のゲームに疑問を抱くもの達が現れ、
やがて80年代のアーケードゲームファミコンゲームに注目が集まり
国内初のレトロゲーム雑誌「ユーズド・ゲームズ」創刊やインターネットでの個人サイトの台頭によって
「第一次レトロゲームブーム」が起こり始めた。

そんな中、昔からファミコンゲームが好きで次世代ゲーム機を買ってもらえなかった若き俺が
やがてファミコンをはじめとするレトロゲームマニアとして覚醒するのは必然であった。
そして、ファミコン好きに過ぎなかった俺を完全なレトロゲーマーに変えたムック本「なつかしゲーム大全(双葉社刊)」
に記されていた秋葉原の「トライ・アミューズメントセンター」にて
「なつかしゲーム大全」に記された数々の名作アーケードゲームに心ときめかせ、
そして、アーケード版「熱血硬派くにおくん」にも出会った。
情けない親友「ひろし」の仇を討つべく不良どもに、暴走族に、スケ番に、
そしてヤクザの事務所に挑む「くにお」の姿は、若き俺に衝撃を叩き込んだ────。

毎度毎度ボコボコにされる「ひろし」のような少年でも、
熱血硬派くにおくん」をプレイすれば「くにお」と共に真の男になれるのだ。
俺は滾る情熱を鎮めるべく、ファミコン版「熱血硬派くにおくん」も中古で買ってもらったが、
やはりアーケード版の魅力には敵わなかった。

2000年代初頭。高校受験の勉強に嫌気が刺した俺は推薦入学で工業高校に入ったが
そこは非行少年だらけの治安の悪い高校で、それまで髪も染めず、
タバコも吸わず真面目に暮らしていた非行とは無縁の俺は
非行少年たちの格好のオモチャにされ、噂は瞬く間に広まって
いつしか上級生下級生問わずイジメの標的にされ、地獄のような日々を送っていた。

そこにいた非行少年は、もちろん「熱血硬派くにおくん」のような真の男ではなく
ただただ怠惰な学園生活を浪費するだけの快楽主義者ばかりだった。
昼の休憩時間、俺は生徒指導室にあったパソコンでインターネットをするのが唯一の楽しみだった。
そこで俺は2ちゃんねるFLASHアニメ、当時流行していた数々の個人サイトに出会った。

そこで見たFLASHアニメは、非常にクオリティの高いものから醜悪な釣りFLASH
そして「鈴木宗男(ムネオハウス)」「オサマ・ビン・ラディン」などの時事ネタを風刺する強烈なものまで様々で、
とくに、社会風刺FLASHを生み出し、権威やテロリズムを斜めに構えて笑い飛ばす21世紀の「オタク」達は、
拳の道を捨てざるを得なかった「新時代の不良」だと思っていたものだ。

無理もあるまい。それまでの「オタク」達はアニメや映画を愛好していた
ある青年が起こした残虐なる事件をきっかけに、長い間「非行少年」達よりも
陰惨な差別、迫害を受けてきたのだから。
しかし彼らはインターネットの普及により団結し、作品や思想を共有し、
ネットワーク上にコミュニティを設立し、社会に抗っていたのだ。

インターネットの可能性、個人サイトの運営、そしてアンダーグラウンドな魅力……
パソコンの所持さえ夢のまた夢だった高校生の俺にとってインターネットは魅惑の空間であり憧れだった。
そして濃厚なゲームレビューサイトにも出会い、「俺もいつかこんな熱いゲームレビューサイトを作ってみたい!!」と思うようになっていた。
そして、上記の「お宝ゲームの逆襲!」などのレトロゲーム本の購入により
ダウンタウン熱血物語」以降、歴史の闇に葬られようとしていた
アーケード版「熱血硬派くにおくん」について激しく語りたいとも思うようになっていたのだ。

だが同時に、アーケード版「熱血硬派くにおくん」以降の頭身の低い「くにおくん」シリーズに対し
軽蔑の念もまた浮かび上がっていた……。

「不良」が消えたこの島国で

そして201X年。
渋谷などの街を謳歌していた「チーマー」も去り、路上から煙草の吸殻や空き缶がほぼ消え去り、
車が吐き出す排気ガスも黒くなくなり、ヤクザもだいぶ大人しくなった。
若者たちは繋がりを非行行為や暴走行為ではなく、SNSに求めるようになった。

だが、誰もいなくなった教室の隅で、真っ暗な自宅の部屋で、
何かに怯えひとり涙を流す若者はいなくなったか?
世を憂い、社会に追い詰められ、自ら命を絶つ者はいなくなったか?
誰もが「家族」と共にかけがえの無い日常を過ごせているか?
大人たちは、家族を守り養えるだけの収入は得られているか?
オタクたちは、自分の愛した何かに誇りを持ち続けられているか?
SNSほかネット掲示板からから荒らし、クソリプ、悪質アフィリエイトブログは消え去ったか?
誰もがこの国の未来に希望が持てているか?

旧大戦、そして幾度もの震災からも立ち直り、
技術を発展させ、混沌期を乗り越え、新たな繁栄の時を迎えたかに見えるこの国も、
人々の心はまるでメキシコ郊外のスラム街か暗黒管理社会の如く荒廃し、未だ「終わりなき夜」の中にいる。

本当にこの国は、「真の男」を必要としなくなったか?

かつて、「拳の道を捨てた新時代の不良」だったオタクたちも、
やがて長らく迫害を受けていた「第一次オタク世代」が国や会社の上層部を動かす存在となり、
電車男」ブームなどによってオタク存在が一般に認知されたかと思われたが、
それは単に「オタクは好きなものにカネを惜しまない」存在と見られ
害虫扱いから都合のいい家畜扱いに変わった程度であり、
MAD動画の題材は社会風刺や時事ネタから下劣なホモビデオに変わり、
かつて日本最大のインターネット掲示板だった「2ちゃんねる」は今やネット広告と悪質アフィリエイトブログとステルスマーケティングに支配され、
深夜アニメの台頭により作品やキャラに対する思い入れは希薄になって
「3ヶ月ごとに『嫁』が変わる」などと揶揄され、また「ツンデレ」など
各作品のキャラクターの性格がテンプレ化し、拡散し、実態を失っていき
今やオタクたちはCGキャラに声を当てただけのバーチャル存在が
「ひたすら視聴者に無駄に怒り散らしては急に態度を変えて媚びた台詞を吐くだけで基本誰がやっても同じの自称『ツンデレ』動画」
という有機豆バターコーヒーにも劣る極めてしゃらくさいものに一切の疑問やツッコミを抱かず
ただただ「可愛い」などとコメントした挙句サムズアップボタンを躊躇いなく押し、
あるいはソーシャルアプリゲームのレアキャラクターを手に入れるために何十万という金をガチャにつぎ込むあほな「消費者」に成り下がり、
挙句の果てに悪質アフィリエイトブログやFEIKU-NEWS、パクリTweetに煽られて
炎上行為や悪質ステルスマーケティングの片棒を担がされたりして本当にどうしようもなく、
最近では「バビ肉」などとゆってヴァーチャル空間での性転換を行い、必死で女の声を出して
男としての人生を放棄してまでチヤホヤされたがる不届き者が現れる始末だ。

わかったか?要するにお前たちは「殺人鬼予備軍」ではないとわかった途端「ナメられた」のだ。

お前は違うと言えるか?これ以上、このクソッタレな国や社会にナメられたくないか?
ならば今こそ拳を掲げ「反抗」する時だ。
この国を覆い尽くす、お前たちを堕落と散財へ導く悪しきタルサ・ドゥームの魔術を
「なめんなよ!この野郎!!」の叫びと共に信念を込めた拳で打ち砕くのだ。

あんしんしろ。今は「アーケードアーカイブス 熱血硬派くにおくん」がある。
それをお前のNintendo SwitchなりPS4なりにダウンロードすれば、
お前のそばにはいつだって真の男「くにお」がいる。
熱血硬派くにおくん」をときどき引っ張り出してプレイすれば、
たとえお前がどんなゲームをプレイしようとも、「真の男」の魂はお前の魂の最後の一線で踏み止まり続けるはずだ。

理不尽と甘言に抗い、己の信念を貫く魂をわすれるな。

くにおくん」は実体を失ったのか?


くにおくん』シリーズは、時代を追うごとに拡散していく「不良」像をと、
右肩上がりの急激な成長をするゲーム界に歩調を合わせ、
そしてそれに翻弄され、「不良」の消滅とともに姿を消した。

それは、黎明期から成長期にかけてのゲーム界と、
バブルに踊り狂った八○年代から九○年代の日本をも象徴しているかのようでもあった。

────松谷創一朗

……株式会社ZEST刊「お宝ゲームの逆襲!」に寄稿された松谷創一朗氏の
熱血硬派くにおくん」レビューは以上の文章によって締めくくられた。

……正直に言おう。ここから先の文章は俺が最初に予定していた内容とは大幅に変更される。
ダウンタウン熱血物語」以降の頭身の低い「くにおくん」シリーズを
アーケード版「熱血硬派くにおくん」と比較して徹底的にコキ下ろす内容になっていただろう。
だがそれは、ほかのシリーズをロクにプレイしないで「熱血硬派くにおくん」だけを絶対視・異常崇拝する
単なるイチャモン付けの腰抜けの、読む価値のない駄文に他ならない。

しかしここまで書く前に、俺は「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」にて
ダウンタウン熱血物語」と「熱血高校ドッジボール部」をプレイする機会があった。
そしてその経験が、俺の偏見を吹き飛ばし、知見を深め、見落としていたものが少し見えてきた。

さて、これまで株式会社ZEST刊「お宝ゲームの逆襲!」に寄稿された松谷創一朗氏のレビューを引用してきたが、
ダウンタウン熱血物語」以降の「くにおくん」シリーズをちゃんとプレイしてきた熱心なプレイヤーには違和感を感じる部分があっただろう。

やれ「本来の「熱血硬派」ぶりはひどくスポイルされ、くにおくんはただの体育会系野郎と化した」?
やれ「「くにおくん」は、時代とゲーム界の成長にいち早く迎合するための都合の良い記号として、加速度的に消費され」?
「実体を持たないまま拡散していく」?
やれ「パロディの延長上にある、ファッションとしての、
八○年代ジャパニーズ・ポップとしての「不良」像しかなかったのだ」??
「そして『くにおくん』も、その時代に抗うことなく、
ただただそれに同調していく」???
やれ「時代を追うごとに拡散していく「不良」像をと、
右肩上がりの急激な成長をするゲーム界に歩調を合わせ」????
「それに翻弄され、「不良」の消滅とともに姿を消した」?????


なめんなよ!!!この野郎!!!!!


確かに「ダウンタウン熱血物語」以降、くにおくんの頭身は下げられ
不良の本業である喧嘩よりもスポーツゲームの方が多くなり、
(発売当時ですら、「ダウンタウン熱血物語」は「くにおくんシリーズの中でも異色の作品」と言われていたものだ)
作品を追うごとにギャグ要素が強まり、「くにおくん」は「硬派な不良」としての実体は薄れていったかもしれない。
だが、「くにおくん」はテクノスジャパンでの24作もの長寿シリーズの中で
単なる「硬派な不良」としてではなく「くにおくん」としての新たな「実体」を得たのだ。

そもそも、「熱血高校ドッジボール部」の時点で、くにおは健全なスポーツマンに成り下がったワケではない。
くにおくん」シリーズのスポーツゲームは、暴力、アイテム、必殺技なんでもアリの、
くにおが「不良」だからこそ成り立つ「ケンカスポーツ」だ。
その「なんでもアリ」の要素が小学生ファミコンゲーマーを熱狂させ、
くにおくん」シリーズを大ヒットシリーズへと変えていったのだ。
そしてそこには、男子高校生である「くにおくん」というキャラクターの妙がある。
もし仮に、「くにおくん」に代わって「ダブルドラゴン」の双截拳伝承者
ビリー&ジミー兄弟が、ウィリーやアボボ、ウィリアムスやリンダといった「ブラック・ウォリアーズ」の面々と
楽しくドッジボールやサッカーやストリート・バスケットや運動会に励む姿が想像できるか?
できないだろう。

そして、かつて俺も「『ダウンタウン熱血物語』は『不良=あほ』というマイナスイメージを植え付けるためのゲーム」
だと思っていたが、実際に「ダウンタウン熱血物語」をプレイしてそれが間違いであることがわかった。
確かに、どうしようもないあほも敵キャラに出てくるが、それはゲーム内のごく一部に過ぎない。

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「ぴゅ ぴゅ ぴゅ の ぴゅー」で有名なボスの「にしむら」。あほなのはこいつとこいつの高校の生徒ぐらいだ。
アーケード版「熱血硬派くにおくん」では、まさに時代に向かって声無き叫びを上げるがごとくカッと開かれていた
くにお達の口は「ダウンタウン熱血物語」では固く閉ざされ、
くにお自身も、ひろしの前でしか見せなかったはずの笑顔をショップの店員に平気で見せたり、
書店でいかがわしい本を購入して驚嘆の声を上げながらパラメータをアップさせるような男になってしまったが、
それでも「くにお」は最後まで「熱血硬派」であり、「正義の不良」だった。

ダウンタウン熱血物語』終盤。冷峰学園を牛耳る「ダブルドラゴン兄弟・りゅういち&りゅうじ」を
「まっはたたき」で滅多打ちにして壮絶な死闘の果てに打ち破ったくにおたちの前に現れた男は、
奇怪な催眠術で生徒たちを操っていた冷峰学園生徒会長、
そしてくにおのかつての友「やまだ」であった。
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くにおに対し執拗な対抗心を燃やし、ついにはゲームを乗っ取って
「熱血硬派やまだくん」にタイトルを変えてやるとまで豪語したやまだに対し
やはり「まっはたたき」で滅多打ちにして真の男の真の力を見せつけたくにお。
完敗した「やまだ」は天を仰ぎ呟く。
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やまだ
「そ・そんな ばかな… おれの あくのぱわー
 が つうようしないんなんて… げろろんぱ。

 ……むかしから くにお だけには
 まけたくなかった……

 おまえと なかまだったときも
 そうおもってきた・・・・・・・・・・・だが


 さすが ねっけつこうはだ… おれなんかより
 ひとまわりも ふたまわりも でっけえぜ!

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やまだ
「ふっ ぜんこくとういつか………
 おれはまた いちからでなおす。

 こんど あうときは こうは いかないぜ…
 よおーっく おぼえとけよ…    がっくーん♡」

こうして冷峰学園元生徒会長「やまだ」の野望は潰え
「やまだ」は街から姿を消し、『ダウンタウン熱血物語』は静かにエンディングを迎える……。

ダウンタウン熱血物語」以降のシリーズには、「熱血硬派くにおくん」を手がけた
「岸本 良久」氏は関わっていない。氏がテクノスジャパン在籍中に
熱血硬派くにおくん」以外で関わったのは
熱血高校ドッジボール部」アーケード版とスーパーファミコン
「初代熱血硬派くにおくん」と「真・熱血硬派 くにおたちの挽歌」だけだ。
だが俺は「ダウンタウン熱血物語」をクリアしてついに確信したのだ。
熱血硬派くにおくん」と「ダウンタウン熱血物語」以降のシリーズは完全な水と油ではない、
くにおくん」は堕落しても実体を失ってもいない、どんな姿になろうとも、誰がゲーム制作を手掛けようと、
くにおくん」はいつだって「熱血硬派」であり「真の男」なのだと。
そして「熱血硬派くにおくん すぺしゃる」の発売をもって、水と油、
熱血硬派くにおくん」と「ダウンタウン熱血物語」以降のシリーズは混ざりあったのだ。
(などと言いつつも「熱血硬派くにおくん すぺしゃる」発売当時、俺は
「元祖「くにおくん」を「ダウンタウン熱血物語」準拠のグラフィックでリメイクするなんて!!」
……などと憤慨したのは言うまでもないが。)

そして、俺を含むプレイヤーにとって本当に大切なのは、
不良の実体がどうとか時代がどうとかではなく、いつだって
「ゲーム自体がおもしろいか、つまらないか」だけだったはずだ。

くにおくんシリーズの乱立が、テクノスジャパンの寿命を縮めた」?だからどうした。
テクノスジャパン倒産までの全24作、そして株式会社ミリオンへ権利譲渡されてからの移植・リメイク作、
そしてアークシステムワークスに権利譲渡されてからの「超熱血!」シリーズや
熱血硬派くにおくん すぺしゃる」以降のシリーズ…………
そのいずれにも、誰かのかけがえのない思い出となっている「魂の一本」があったはずだ。

では、松谷創一朗氏の「熱血硬派くにおくん」レビューは、一方的な主観でのみ描かれた
読む価値のない、単なるイチャモン付けの腰抜けの駄文だったのか?

そんなことはない。松谷創一朗氏は「お宝ゲームの逆襲!」巻末のライター紹介ページでは
「週間SPA!などで活躍するライター」と書かれており、「今回は、何かと一元的に語られがちなゲームに対し、
いろんな視点を傾けてみました。」とある。もともとゲームライターやフリーライターとかではなかったわけだ。
同書の他のライターとは一線を画する、レビューに独特の「重み」を感じるのもうなずける。
何しろ、「お宝ゲームの逆襲!」発刊当時ですでにくにおくんシリーズは24作、
そのうち11作がファミコン版だ。いくら取材のためとは言えこれだけのゲームを
当時の内にプレイするのは多忙な雑誌ライターにとっては酷だ。
だが、年月まで詳細に思い出され、情景が思い浮かぶほど詳細に描かれた
熱血硬派くにおくん」稼働当時の思い出と熱い想いは、真の「R・E・A・L」さを十分に感じさせた。
しかし松谷創一朗氏は、岸本良久氏が「熱血硬派」を復権させるべく発売した
「初代熱血硬派くにおくん」と「真・熱血硬派 くにおたちの挽歌」はおろか
ダウンタウン熱血物語」にすらレビュー内で触れておらず、ページ下の注訳内の
くにおくんシリーズ年表」に辛うじて名前が載っているだけ、しかもこの年表は
発売ハード表記が間違っているなど極めていいかげんだ。
つまり、かつての俺のように松谷創一朗氏の「魂の一本」である「くにおくん」シリーズが
唯一アーケード版「熱血硬派くにおくん」だけだった、それだけの話だ。

そして、「くにお」は帰ってきた。
チンピラが何人束になっても、暴走族がバイクで轢き殺そうとしても、
スケ番の女王「みすず」の怪力をもってしても、ヤクザのドスや拳銃をもってしても、
日本から「不良」が消え去っても、テクノスジャパンが倒産しても、リーマン・ブラザーズ社が破綻しようとも、
誰一人として「くにおくん」を殺すことはできなかった。
そしてバブル崩壊以降ドン底のまま地を這い続けた「平成」の終わりを目前として、
アークシステムワークスの手によってまた新たな「くにおくん」の戦いが紡がれようとしている。
松谷創一朗氏は今、この「くにおくんシリーズ」の再興をどんな気持ちで眺めているのだろうか。

だが俺は違う。アーケード版「熱血硬派くにおくん」をクリアし、
ダウンタウン熱血物語」もクリアし、「熱血高校ドッジボール部」も楽しんだ俺は
更なる知見を深め、真の男としてさらに成長した。
そして、俺はとことん止まらない。
いずれは「熱血硬派くにおくん すぺしゃる」「熱血硬派くにおくんSP 乱闘協奏曲」
くにおくん ザ・ワールド クラシックコレクション」そして来るべき
ダウンタウン乱闘行進曲マッハ!!」にも向き合わねばならない時が来るだろう。

それが、ここまで「熱血硬派くにおくん」そして「くにおくんシリーズ」に対して
大口を叩き続けた俺の歩むべき宿命だ。

そして俺はなおも願う。俺よりもさらに先の世代のゲーマーたちにも、
真の男「くにお」が「待てこの野郎!!」と叫んで熱血高校校門前を駆け抜ける勇姿を見つめ、
新時代の真の男への第一歩を踏み出す時が来ることを…………!

熱血硬派終章・未来へ

長かったこの記事もいよいよ2万文字を超えた。そろそろ締めに入ろう。

俺がアーケード版「熱血硬派くにおくん」を通じて本当にお前たちに伝えたかったことはなにか?
なぜ、どんなに技術が進歩してもなお日本人の心は凍てついたままなのか?
「真の男」にとって、この国にとって、一番たいせつなものは何か??

それは、漠然と社会や国家権力に反抗することでも、がむしゎらに拳の道を極めることでも、
たった一人でヤクザの事務所を壊滅させることでもない。

たった一人の高校生だった「くにお」を命を懸けて闘うまでに駆り立て、
ドッジボール部の主将でありながら、サッカー部やアイスホッケー部の助っ人となり、
「くにお」を「真の男」そして「正義の不良」たらしめたもの。
そして、昭和暗黒混沌期の人々を繋ぎ、平成の世まで支え続けたもの。


それは、「人助け」そして「助け合い」の精神だ。


昭和時代、台所の塩が足りなくなればお隣に借りに行くのが「ご近所付き合い」であり、日常的光景であった。
だが現代はコンビニエンスストア、総合ショッピングモールの台頭により
塩が足りなくなったらお隣に借りに行かなくともコンビニに行って買えば良い。

だが、そんなコンビニエンス化社会と苛烈なディスカウント競走は、
「ご近所付き合い」を極めて希薄にし、総合ショッピングモールの台頭は
商店街をシャッター街に変え、そしてディスカウント競走の激化に伴い
とうとう人件費、労働者の権利価値までもがディスカウントされる社会となった。

こうして、慢性的な少子化、親は虐待、会社はブラック経営が流行の国となり
技術の進歩に反比例するが如く人々は貧困に苦しみ、心はメキシコ郊外のスラム街の如く凍りついた。
そして今も、この島国のどこかで、「自己責任」の名の下に放逐され、
疲弊し、打ちのめされ、絶望に沈んだ命が消えていく……
誰ひとり手を差し伸べず、誰にも顧みられることもなく…………END OF HEISEI………………。

だいたい分かってきただろう。日本人の精神は戦時中から、あるいは更に昔、
村八分」が横行した士農工商の時代から一歩も進歩していないのだ。
戦場が会社に、上官が上司や会社に、特攻隊が非正規雇用社員に置き換わっただけで
理不尽と無謀な戦略のなかで命が投げ捨てられた大日本帝国軍の悲劇を今もこの国は繰り返し続けているのだ。

このまま、お前の命も紙クズの如く投げ捨てさせるつもりか?
そんなつもりはないのだろう?ならば、今こそ「反逆」のときだ。

社会が「死ね」と言うのなら、生き延びることがお前の反逆だ。
社会が「自己責任だ、捨て置け、見殺しにしろ」と言うのなら、
あえて危険を冒してでも助ける手を差し伸べるのがお前の反逆だ。

今すぐヤクザや暴力団に喧嘩を売ってこいとは言わない。
困っている者を、苦しんでいる者を少しでも助けられる男になってくれ。
誰かを助けることができる者を、空想や創作物の中だけの存在にしないでくれ。

もしどこかで火事が起こっても、「誰かが消防車を呼ぶ(呼んだ)だろう」などと思っていては、
火の手がどんなに燃え広がり、多くの命と思い出が炎の中に消えることになろうとも、消防車は絶対に来ない。
なぜか?お前を含むだれもが「誰かが消防車を呼ぶ(呼んだ)だろう」と思っていて、誰一人実際に消防車を呼んだやつはいないからだ。
すべてが手遅れになる前に、お前が消防車を呼べ。むしろ火事を見た者全員が消防署に通用するぐらいの気概でいけ。

いずれ、俺たちの世代は「バブルの金を必死で溜め込んで生き延びた老人ども」と
「俺たちより少しはマシな時代を生きていくであろう若い世代」との間で擦り潰されて、
文字通り「失われた世代」なって消えていくことだろう。
「人助け」そして「助け合い」の精神。
「くにお」が、たった一人の真友のために命を懸けて戦った魂、その原動力。
それが、平成の先の時代を生きて行くお前たちに遺す願いだ。
熱血硬派くにおくん」の名のもとにこのページに辿り着き、
ここまで呼んでくれた者に、この記事と未来を託す。
お前たちが人助けと助け合いの精神を大切にしてくれれば、
再びこの国に、国民に温かみが、より良い未来が戻ってくるかも知れない。
俺たちも時代に擦り潰されずに済むかもしれない。

いいか。俺がこのページを書いたのも、お前がこのページに辿り着いたのも
いわば一つのDestiny……運命なのだ。
だから約束してくれ。「人助け」そして「助け合い」の精神を忘れず、少しでも多くの人間に伝えてくれ。、
そして最後に、もう一つだけ約束してくれ………………………

歩きスマホはやめろ。

次回予告

俺がお前たちに伝えたかったことはこれで全部だ。
だが、これで「熱血硬派くにおくん」関連の記事が完結したわけではない。
俺にはまだ、話していない、そして話しておくべき話がある。

熱血硬派くにおくん」の海外版「RENEGADE」や、
ファミコン版「熱血硬派くにおくん」から現在の「アーケードアーカイブス」に至るまでの
熱血硬派くにおくん」移植の軌跡、そして本項でも引用した
「お宝ゲームの逆襲!」などの熱血硬派くにおくん」を取り上げた書籍の紹介だ。

次回は、熱いコロナを一気に飲み込んだ直後につまむドリトスのような、
今回までよりも少しは軽めのコンテンツにするつもりだ。

次の記事で「熱血硬派くにおくん」関連の記事は最後になるだろう。、
それまでもう少し、俺の話に付き合ってくれ。
そしてその間も、アーケード版「熱血硬派くにおくん」の練習を続けてくれ…………毎日だ!

【続く】

*1:映画俳優ダニー・トレホロバート・ロドリゲス監督の従兄弟であり、彼の映画作品にはほぼ必ず出演している。初主演作は「マチェーテ」。ここではロドリゲス監督作品「デスペラード」でトレホが演じた「ナバハス」の事を指すと思われる。