どくのメモ帳

どくイモムシの毒吐き場。ゲームレビュー記事「超ファミコシ珍拳EXPRESS」も連載中。

電子遊戯のやり込み要素を考えろ!!

「やり込み」 …それはTVゲームにおけるエクストリームスポーツであり、
RPGで全キャラのLvを99にする・すべてのアイテムを集める」「シューティング・アクションゲームでスコアをカンストさせる・高次週を攻略する」
などといった「クリア目的の通常のプレイでは行う必要のない行為」をあえて行い、
そのゲームを完全、あるいはそれ以上に極める一部の「廃人」たちに許された聖域である。


ところがである。
近年のゲームでは、こうした「やり込み要素」がプレイヤーの任意ではなく、ゲームの目的の一環として意図的に入れられるようになり、
「図鑑コンプ」「ミッションコンプ」「CG回収」「周回要素」などのやり込み要素がどのゲームにも必ず入っているのが現状である。
特にXBOX360のゲームには「実績」というハードメーカー公認のやり込み要素がどのゲームにも入っている。


俺は、こうした強制的な「やり込み要素」に対しては否定的であり、
本編は悪くなかったがやり込みが作業化してウンザリして(or極める前に新しいゲームが出て)
プレイを止めてしまったゲームが数多く存在する。


なぜこんな事になってしまったのか?簡単である。こうしたやり込み要素を付けることでプレイヤーのプレイ時間を引き伸ばし、
メーカーが手塩にかけて作ったソフトを簡単に中古に流させないためである。
でも、本当にあそこまでする必要があるの?クリア後にさっさと中古に流されるなら、それはやり込みよりもゲームそのものに問題があるんじゃないの??


そんな中、ネットで興味深い記事を発見した。


「やり込み要素の危険性」
http://allabout.co.jp/game/gamenews/closeup/CU20100213A/


この記事を書いているのは「All About」というサイトのゲーム業界ニュースのライター「田下 広夢」氏であり、
この人の記事は俺が2chで巡回しているあるスレでよく取り上げられており、なかなかためになる。


で、今回田下氏(以下:ガイド)は、「ユーザーの遊ぶ時間を大量に奪っている」
「新品市場と中古市場は無関係ではない」
「やり込み要素によるプレイ時間の引き伸ばしはメーカー自身の首をしめている」と提起し
「無闇にやり込み要素を入れるのは危険」であるとしている。(もちろん、やり込み要素自体が悪いとは言っていない。)


ガイドは他にも興味深い記事を書いているので、興味のある方は他の記事にも目を通してみよう。
(ラブプラスの記事もあるぞ。)

まぁ「やり込み要素」が如何に危険かはガイドのお話を聞いてもらうとして、ここからは俺の「やり込み要素」への思いのたけをつらつらつららららぁ!と。

やり込み要素は何処から来たのか?


少なくとも俺が子供の頃、スーファミからPS初期くらいまではそんなやり込み要素のあるゲームはなかった。
とりあえずエンディングを見ればそのゲームは終了であり、他のゲームに移っても、そのまま自己責任でやり込み続けるのも自由であった。
そこに、なかば強制的に「やり込み要素」を投入したのは、やっぱりあの名作ポケットモンスターだと俺は思うのだ。
ゲームを開始すると、最初に博士からもらったポケモンしか載っていない図鑑を渡され、博士から「キミのてで このずかんを かんせい させるのじゃ!!」
などと言われて冒険を始めることになる。
一応、エンディングを迎えるための目的は別に有り、8人のジムリーダーに勝利して、最後の四天王とチャンピオンに勝利すれば晴れてエンディングを迎えられる。
だがプレイヤーとは恐ろしいもので、自分がチャンピオンになろうが、ライバルと決着をつけようが、博士から手渡された図鑑の完成がいつしか主目的になっているのである。
そのくせ、集めたポケモンで友達と対戦できるとなれば、意地でも強いポケモンを探して世界を放浪したくなる。
また初代よりポケモンシリーズは2バージョンに分けて発売され、友達同士での交換を想定して片方のバージョンだけでは図鑑を完成させられないようになっており、
中にはゲームボーイ2台と2バージョン両方を購入して一人でポケモン図鑑をコンプリートする強者もいた。(俺がそうだった。)
ポケモンを作っているのは任天堂ゲームボーイを作っているのも任天堂。こうなれば、完全に任天堂の思うツボだ。
一つのゲームを長く楽しんでもらえるし、ソフトも売れ、ハードも売れる。任天堂はこうして、PS絶世期の冬の時代を生き延びることができたのだ。
当然、ポケモン絶世期には他社からも模倣作が大量に作られるわけだが、それは単にブームに乗ったからだけではなく、
「やり込み要素」による効果に多くのメーカーが気づいてしまったからなのかも知れない。
そうしていつしか、ポケモン系以外のゲームでもやり込み要素が付随されるようになり、現在に至っているのかも知れない。


ただ勘違いしないで欲しいのは、ポケモンはあくまで「子供向けのゲーム」であること。
子供は時間も沢山あるし、そう簡単にゲームを買えないから1つのゲームを長く楽しもうとする。だから、こういうやり込み要素も普通に受け入れられる。
だが、大人になるとゲームのできる時間も減り、子供の頃よりも沢山ゲームを変えるようになり、ひとつのゲームに対するモチベーションも変わってくる。
そうなると、大人の場合「やり込み要素」が苦痛に感じられてしまう場合もありえないとは言えない。


そもそなぜプレイヤーはやり込まずにはいられないのか?


ゲームにやり込み要素を付ける方法は簡単である。RPGなら、手に入れたアイテムを自動的に記録するリストをプレイヤーに手渡せばいい。
プレイヤーというものは不思議なもので、リストに空きがあると、意地でも埋めたくて仕方が無くなってしまうのだ。(個人差はあるだろうが、ある程度は埋めようとするだろう)
そうなると完全にメーカーの思うツボなのだが、プレイヤーはリストに空きがあるままだとどうにも気分が悪くなる。(少なくとも俺は気分が良くない)
いつしか「エンディングを見てクリア」ではなく「クリアした後、、やり込み要素を完成させてからが本当のクリア」という概念になってしまうのである。
RPGなら、図鑑要素意外にも「ゲーム開始からの総時間・総全滅回数・宝箱回収率」などが記録されるリストをプレイヤーに手渡せば
タイムアタック」「ノー全滅クリア」などのやり込みプレイを暗黙の内に察知し、「やってやるぜ!」と張り切ってくれるわけだ。


「リストが埋まらないと気分が悪い」「全滅回数を記録されると気分が悪い」…今日のやり込み要素とは、そうしたプレイヤー心理を巧みに利用した「長く遊ばせる」手段である。
時間に余裕が有り、またそういう要素が大好きならば好きにしてくれれば良い。
だが、すべてのプレイヤーがやり込みを好むかといえばそうではないだろう。

やり込みは作業?やり込んだ先には何がある??


「やり込み要素」を入れればプレイヤーはイヤでも長く遊んでくれる。では、そこまでしてやり込んでくれたプレイヤーにメーカーはどうしている?
ゲームによっては、プレイヤーに感謝の言葉が送られたり、俺tueeeeeeeeeeeなスペシャルモードが解禁されたりするものだが…


ところがどっこい…!
何もなしっ…! これが現実…!


そう、実は「コンプリートした」という事実だけがプレゼントされるゲーム、これが結構あるのだ。
もはや、「どうせ達成出来ないだろうからwww」とタカをくくっているんじゃないか?とも思えるくらい。


やり込み要素には、時としてゲームを「作業化」し、楽しみを大きく削ぎ落としてしまう事もある。
RPGのレベル上げくらいはまだマシだが、「対戦ゲームで、全てのキャラの対戦組み合わせを99回にする」「ギャルゲーで、エンディングのCG1枚ずつのために特に分岐も無く1周8時間かかる本編を何周もクリアする」
なんて無茶な条件が要求されることも少なくない。
ここまでくると、プレイが作業化しすぎて「これはもうゲームではない」と完全に楽しめなくなったり、次の新作が発売されてしまったりする。
ハンバーグが大好きでも、毎日ハンバーグならばいつの日か必ず飽きが来る。
どんなに素晴らしい内容でも、何周もプレイ「させられたら」ウンザリしてしまう。
「やり込みを達成したい」という感情が、いつしか「やり込みを達成しなければ」という「強制」に変わってしまうのだ。
大事な人生の時間を浪費してまで、自らを追い込んでまで、メーカーの要求に応えようとしてくれるプレイヤーに対して、この仕打はあんまりではないか?


あまり対価が豪華すぎると、どうしても達成出来ない人に対して申し訳ないかも知れない。
だがメーカーには、せっかく用意したやり込みに応えてくれたプレイヤーには、十分な敬意を払っていただくべきだと思う。

理想のやり込み要素


コナミがDSで発売したアクションゲーム「魂斗羅デュアルスピリッツ」には、本編とは別に「チャレンジモード」と呼ばれるやり込み要素がある。
本編のステージの一部を使い、短い時間でプレイできるミニゲーム的なステージを様々な条件でクリアしていくミッション形のやり込み要素だ。
量も調度良いし、クリアした数に応じて隠し要素が次々とオープン。そして何より、
本編ステージの練習になり、腕の上達が目に見えてわかるので、モチベーションも下がりにくい。
アクション・シューティングのやり込み要素としては、こんな感じが理想的だと俺は思う。


また、DSのシューティング「ケツイ デスレーベル」では、プレイヤーのプレイに応じて実績が解除される仕組みになっているが
長期間実績が解除されないと、ひとつ強制的に実績が解除されるようになっている。
その際強制解除された実績の条件もわかるので、後から条件を満たして自力で解除することもできる。
(俺は「最後の一つ」を自力で解除することがついに叶わなかったが…)


どうせこんなどくイモムシが何を言っても無駄だろうが、せめて誰かが共感してくれることを祈って書いてみる。


1:「やり込み」は本来エクストリームスポーツであり、一般人がそうそう入ってこれるものではない。
2:厳しすぎるやり込み要素は、ゲームの楽しみを大きく損ないかねない。
3:メーカーは、やり込んでくれるプレイヤーに最低限の敬意を!

最後に


「やり込み要素」が付けられるのは、主に中古対策のためである。
今では古本屋でも中古ゲームを扱うようになり、ゲームの売却が容易になった。
だからといって、ろくにプレイもしないで「クソゲーでした。売ってくる」なんてのは
ゲーマーとして絶対に許されないことである。やむを得ない理由以外は、せめてエンディングくらい見てからにして欲しい。
心ないユーザーのせいで中古対策が加速し、ゲームの印象が悪くなってしまうのは、メーカーとしても、プレイヤーとしても、悲しいことである。


俺はやっぱりやり込み要素は要らないと思う。あくまで俺の主観だけど。
「強制」されるとどうしても億劫になってしまう。
「やれなくはないけど、無理してやらなくてもいいよ」が「もちろんできるよねww?」に変わってきている。


俺は完全コンプリートまで100時間かかるゲームよりも、1時間でエンディングに行けるが100プレイしても飽きないゲームをやりたいんだ。


いつも通り感情任せに描いたのでいろいろと至らない部分もあると思いますが、
ここまで読んでくれて、本当にありがとうございました。