「ワールドうごメモギャラリー」で好評だった後、現在Youtube「KANDWAのうごメモチャンネル」にて
毎週月曜〜金曜日夜19:00に連載公開されている「ナビス」シリーズの今週のコメンタリー記事です。
そんな「ナビス」シリーズのYoutube連載投稿も、今週でいよいよ完全完結を迎えます。
※コメンタリーには各話のネタバレが含まれる場合がありますので、心配な方は先に動画の方を閲覧していただくことを強くオススメします。
「ナビス」第1シリーズだけを観るなら→【こちら】
第2シリーズ「ナビス2」だけを観るなら→【こちら】
第3シリーズ「ナビス3」だけを観るなら→【こちら】
ナビス3 #24「空虚」
【ナビス戦争・終戦編】
「ナビス3」の世界でも年が明けました。
ナビス達は家から出ていってしまっただけでなく、やがて人類の敵となり、
やっとできた彼女に取り返しのつかない傷を負わせ、そして大戦争の末、上空からの殺虫剤散布で滅ぼされた。
少なくとも、この段階の主人公はそう思っていました。そうして迎えた新年は、彼にとって人生で一番カラッポな新年となったようです。
私の2021年の新年も、コロナウイルスの影響で帰省も初詣にも行けず、味気ない新年を迎えました。
とりあえず、初日の出は拝めましたが……。
鏡餅など、お正月に欠かせない縁起物ではなく、食べ終えてそのままの年越しそばの器で「カラッポの新年」を表現したのは個人的にうまく行ったと思います。
さて、ナビス3#22までの「とある保健所職員の手記編」の主人公、「藤島」さんとナビスを育てていた主人公は密かに連絡を取り合っていました。
そして、主人公は藤島さんに新年の挨拶と、パープル・リリパット駆除の最後のお礼を言うために電話をかけ、
パープル・リリパットとの最終決戦の場となった●●市の山中の話を聞き、主人公はその山へ足を運んでみることにしました。
ずっと探していた、そして憎み続けることになった、ナビスの、パープル・リリパットの足跡が何か見つかるかもしれない、そう思いながら……。
主人公の住む町から電車で2駅。山の場所もすぐに分かりました。
ここに何があって、何が起こったのか。
ナビス達の長い長い旅に思いを馳せながら山中に入ると、そこにはしなびたパープル・リリパットの死骸。そして、すでに焼け落ちていた山小屋。
ナビス帝国の痕跡も、皇帝ナビスの栄華も、何一つ主人公の目に入ることはありませんでした。
そして、とうとう主人公は最後まで「ナビス文明の支配者」の存在に気付くこともありませんでした。
主人公がただひとつ分かったことは、「おそらく もうこれ以上パープル・リリパットに苦しめられる人はもう現れないだろう」ということだけでした。
もうちょっと何か言うことがあるんじゃないか、と思いますが、きっと主人公も、そして作者も喪失感から放心してうまい言葉が思いつかなかったんだと思います。
しかし。「何もかも、終わったんだ。 …………きっと。」と残し、その場を立ち去ろうとした主人公の耳に、
聞こえてはならないはずの「鳴き声」がはっきりと聞こえたのです!!!
ナビス3 #25「帰宅」
【最後のナビス編】
すべてが終わった山中で、主人公が確かに聞いた「いるはずのないものの鳴き声」。
それは、確かに「ナビス」でした。そう、「死の灰」がナビス達に降り注いだ大晦日、
一匹の大人ナビスが最後まで守っていた赤ちゃんナビスだったのです。
主人公が声のする方向へ振り向くと、そこには戦死したナビスの亡骸にすがりついては泣きじゃくる、真っ黒に汚れた赤ちゃんナビスの姿が……!!
……が、ここでも私は重大なミスを犯してしまいました。
こちら↓の画像と、
こちら↓の画像を見比べてみて下さい。
そう。
この回に登場しているのは赤ちゃんナビスなのに対し、大人ナビスの死骸が小さすぎるのです!!!!!
死後時間が立って、死骸がしなびて小さくなってしまった、ということでひとつ……。
で、思わず赤ちゃんナビスを抱え上げる主人公。
この時の主人公の言葉はだいぶ悩みました。一番最初に考えたのは
「お前、こんな所にいたら殺されてしまうよ!!」でした。で、最終的に決まったのは……
「ここはもうお前たちが居ていい場所じゃないんだ!!!
お前たちは…… お前たちは…… 人間の………………!!!!」
……人間の敵。パープル・リリパット。そう言いかけた直後、赤ちゃんナビスは渾身の力を込めて泣きじゃくります。
その姿に、ついに主人公は心動かされ、もう二度と叫ぶことはないと思っていた、「その名前」を叫ぶのです!!!!
これまで20話以上に渡る「ナビス3」の辛い辛い展開。
それらは全て、このクライマックスをドッッッカーーーーーーーーンと盛り上がるための布石だったのです。
そして、「まずい!!ぐったりして来たぞ……」から「元気になってくれたようだ!!!」のくだりは「ナビス」初期エピソードのリフレインです。
あの時、主人公は赤ちゃんナビスに何を与えればいいかわからなかった。でも今は、何を与えなければならないか分かっている!!!
こうして、主人公が必死で自販機から購入した水のおかげで「最後のナビス」の生命は無事に繋がり、
憎むべき「パープル・リリパット」ではなく、かつての愛すべき「ナビス」の姿を見た主人公は最後のナビスを胸ポケットに入れてを自宅へ連れて帰るのでした。
こうして、「ナビス3」最終章「最後のナビス編」が始まりました。
いろいろ思うところがある方も居るかも知れませんが、今はただこう言ってあげてください。
「おかえり!!ナビス!!!」と。
ナビス3 #26「幸福」
【最後のナビス編】
主人公が、ナビス帝国のあった山から連れ帰った「最後のナビス」。
これは、ナビスに対する優しさを取り戻した主人公と、最後のナビスとの幸せに溢れる2ヶ月間の日々のお話。
まずは、赤ちゃんナビスから2本の足で立ち上がり、最後のナビスが子ナビスになるシーンからスタート。
それからは、落書きをしたり、縄跳びをしたり、保水瓶の水鉄砲で遊んだり、
マッチ箱のベッドから、マウスパッドのベッド、そしてあったか毛布ベッドへ。最後のナビスの成長に合わせて寝床も変わっていきます。
それはまさに「ナビス」第1シリーズの名場面のリフレインの連続であり、
「これは本当に現実なのか?主人公が見た幻覚なのではないか?」と思う人もいそうなので
これが確かな現実であることの証明として、「ナビス2」最終回で壊されてしまった「ウサハチ」に代わり
大幅にパワーアップした新商品「ウサハチ2」が大人になってからの最後のナビスの友達として登場しました。
ウサハチ2は音に2倍反応し、電池も長持ち2倍、目が光って耳と手が動くだけでなく音楽も流れるスーパーおもちゃです。
そして、大人になった最後のナビスはその後もお風呂に入ったり、帰宅した主人公を大喜びで出迎えたりと、
そこには完全に人間を憎む「パープル・リリパット」の面影はありませんでした。
主人公は、「最後のナビスを幸せに育てあげること、それこそが主人公とナビス達がしてきたことへのたったひとつの償いだ」と言っていましたが、
残念ながら私はこんなこと、なんの償いにもならないと思います。
だった一匹のナビスを幸せにしたところで、ナビス達に傷つけられた人々が救われるとでも言うのか?
だった一匹のナビスを幸せにしたところで、あの山で滅ぼされたナビス帝国のナビス達の魂が報われるとでも言うのか!?
でも、少なくとも最後のナビスは、あの山で孤独と絶望に包まれたまま野垂れ死ぬよりは、
主人公の愛を一心に受けて、共に暮らすことができた方がずっと幸せだったのではないだろうか…………。
……やがて最後のナビスを連れ帰ってから一ヶ月。それでも最後のナビスはまだまだ元気でした。
そして、再び家に帰ればナビスが笑顔で待っている、そんな日々が当たり前になっていきました。
しかし、それからさらに一ヶ月が過ぎた頃…………
ナビス3 #27(最終話)「昇天」
【最後のナビス編】
長かった、「ナビス3」もついに最終話です。
「最後のナビス」を連れ帰ってから2ヶ月後。
幸せだった「最後のナビス」の生涯も、終わりが近づきます。
この日、たまたま主人公のバイトが休みの日だったので、最後のナビスの死に目に立ち会うことができました。
毛布ベッドの上で、息も絶え絶えのナビス。
やがてナビスは、蚊の鳴くような小さな声で、朝露の粒よりも小さな涙を飛ばして力なく泣き出します。
「やっぱりナビスも死ぬのが怖いんだ……………!!」
主人公の脳裏に浮かぶのは、「最初のナビス」の最期。
最初のナビスの最期には、主人公はバイトに行っていて立ち会うことができませんでした。
そして主人公は思いを馳せます。最初のナビスもこうして泣いていたのだろうか。主人公がバイトに行っていて、
誰もいない部屋の中で、誰にも見届けられることなく…………!!
でも、今は違います!!!主人公は最後のナビスを両手で優しく抱き抱え、両手の温もりを最後のナビスに伝えます。
そして、「ナビス、最後にもう一度 君を愛することができてよかった。」
「ナビス、生まれてくれてありがとう。今日まで一緒に生きてくれてありがとう。……本当に、ありがとう!!!!」と最後の感謝を述べて、
「僕は最期までこうして一緒だから 安心しておやすみ、ナビス!!」と声をかけてあげます。
嗚呼!!今際の際に、これだけの言葉をかけてもらえること以上の幸せな最期があるでしょうか!?
主人公の最後の感謝に対して、ナビスは赤ちゃんナビスのような精一杯の笑顔で応えたのでした。
そして、ナビスの手足が抜け落ち、
最期のナビスは主人公の手の中で静かに息を引き取ったのです……。
しかし、最後のナビスの最期を看取った主人公の、本当の償いはここから始まるのでした。
それは、最後のナビスを苗として育てず、ナビスとの生活を完全に終わりにすること。
主人公の最後の選択は、最後のナビスを火葬にすることでした。
…………が、ナビスを火葬にする時の「棺」を、当時流行っていたブラウザゲーム
(今でもサービスは続いている!!)「クッキークリッカー」に登場する「グランマ(おばあちゃん)」の姿が描かれた「グランマクッキー」の箱にしたのですが、
ワールドうごメモギャラリー掲載時、「どうしてこんな変な箱なのでしょう?こんな箱で火葬されたのではナビスが可哀想です。」
みたいな絶不評のコメントを戴いてしまいました。ですが、これでもまだマシな最期にしてあげたつもりなんです。
一番最初に考えた話では、「最後のナビスの亡骸をハンマーで粉々に砕いて捨ててしまう」というものだったのですから……。
しかし、#26であれだけナビスをもう一度愛せた主人公を描き上げた後では、とてもそんな事はさせられませんでした。
もし、描き直すことができたならなんらかのお菓子が入っていたであろう
ちゃんとした「桐の箱」を棺にしてあげたかったのですが、「手直しだなんだと言っていたらいつまでたってもYoutubeにアップできない!!」
と思い、公開することを優先して「グランマクッキー」の箱もそのままになってしまいました。どうかご了承ください。
そして、ナビスが焼ける涙が出るほどいい匂いの中、最後のナビスは灰に還り、ナビスを焼いた灰はフィルムケースの骨壷へ。
主人公もナビスが生まれる前からの趣味だった野菜育ても辞めて、「この町」からナビスは完全にいなくなりました。
────日々寒さが和らぎ、やがて近づく春の足音。
奇しくも、Youtube版「ナビス3」最終話の季節と、投稿時期が重なりました。
この記事が投稿される頃には、私達の世界にも「春」の足音が聞こえてくるのでしょうか?
さて、一番最初に考えた物語では、ここで完全に「ナビス」の物語を終わりにするつもりでした。
ナビス戦争を終えて、最後のナビスを見送って、そして全てをナビスがいなかった世界へリセットする。
今では「主人公の彼女」の存在のおかげで、主人公に少しは明るい未来が待っているようですが、
一番最初の物語が頭の中で完成した時、内なる私がこう囁いたのです。
「この終わり方はあんまりじゃないか?」と。
次回、「ナビス 完結編」にて
ナビスシリーズ完全完結。
どうか最後まで、レッツ・ナビス!!